クリエイティブの仕事とは何か?
小池百合子さんが防衛大臣になったということで、久しぶりに新聞を買った。広告を見るとレスポンス広告はもうあたり前になってきている。しかも、以前はレスポンス広告でも形がそうなっているだけで、レスポンス広告らしからぬものが多かったのがそうではない。
こんなに短い期間にレスポンス広告が普及してきているのには驚きである。一方で、今、広告代理店、テレビ・新聞・雑誌・ラジオなどかつて4媒体と呼ばれたものは、「出稿してなんぼになるの?」と聞かれるそうである。スポンサーの意識の変化は、元電通総研社長の藤原治氏による「広告会社は変われるか(ダイヤモンド社)」にも書かれてある通りである。藤原氏の主張は「内輪話だ」などと揶揄する人もいるが、しかし私は氏の主張は広告代理店が抱える問題を素直に書き表していると思う。確かに業界の内輪話といえばそれまでであるが、メディアの在り方というのは我々の生活の仕方、さらに、広告だけで5兆円というGDPの1%に相当する大きな問題なので、経済への影響も大きい。
氏の本で何が面白かったかというと、スポンサーサイドに広告宣伝部門がなくなってきているということである。多くの会社がプロダクトマネジメント制になってきているため、必然的に、広告も経費ではなく、資金計画へと移行してしまう。私の知るある名古屋の会社は、新人でも決算書を見るようになり、一般社員が事業計画を作ることなど、日常のことらしい。ここに、いかに分業(言い換えればマーケティングの4P)が崩れているかが?伺える。
さて、このように広告宣伝部がなくなり、プロダクトマネジメント制へとなると、これまで芸術性が高い評価をされていた広告クリエイティブにも変化が起きるのは当然ということになる。まず、私も実感として、映像技術、印刷技術の向上も手伝ってか、昔ほど色の出具合やら美しさやらにスポンサーがこだわらなくなってきた。かつ、レスポンスを獲らなければいけない ために必然的に色使いは派手になる。すると印刷の場合だと、普通の印刷(平台)よりも高精度プリンタの方が綺麗に見えてしまうこともある。昔は色校を持って何度もチェックしたものだが、最近は印刷技術が優れているのでそんな必要も薄れてきている。かつ、テストをしなければならないことも浸透してきている。そうするとこれまで一つの予算で一つのクリエイティブだったものが、予め修正が生じることを前提としたものにしなければならなくなる。かつ、投資収益率が計算されるとなると、余計に石橋を叩くようなクリエイティブへとなっていく。
そうすると、メディアとしての力だけでなく、広告の華を飾った豪華な演出、タレントも収益性を求められるようになっていくであろう。クリエイティブAは制作費30万でBは3000万だとしたら、Bは100倍のレスポンス、あるいは利益をもたらさないといけなくなってくる。
収益性ということになると、デザイナー、コピーライターも「私は数字は強くありません」、などとは言ってられなくなる。また、クリエイター(創造をする人)と言いながらも意外に新しいことを拒否する傾向にもある。のもかつて私は今ではある意味あたり前になってきたCMS(Contents Management Systeme:要するにこれはWEB上で管理画面を使っての原稿の更新なのだが)、への参加をコピーライターに求められたが「私は下流に徹したい」とのことで断れたことがある。しかしテストをする以上、収益性を求める以上、コピーライターはアクセス数やら、CPO、ROIなどを監視しながらコピーをどんどんと書き換えていかねばならないし、そうなると「CMSは嫌だ」なんていうのは単なるコピーライターのわがままということになる。デザイナーも同様だ。そもそも、コピーライター、デザイナーという分類自体があまり意味をなさなくなってくる。
さらに、クロスメディアもあたり前のものになってきているから、一人のいわゆるクリエイターは、マスメディアでの表現だけでなく、レスポンスをした人へのメッセージ展開なども考えていかなくてはならない。こうなると、元々営業経験の無い人、嫌いな人がクリエイターになるのだが、営業経験は必須となって行くのかもしれない。クリエイターであればこそ、優れたビジネスマンでなければならなくなってくるのだ。
クリエイティブについてはレスポンス広告の浸透という第1波が落ち着き、これからやってくるのは収益性、計測性という第2波である。2011年の地デジ完全移行がもたらす影響は単にテレビCMの話では無い。着々とスポンサーの意識が変化している、あと3年でこの波は確実なり、広告クリエイティブは一度再編成をしなければならなくなってくる。
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